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2021.08.31

甲州商人

山梨県の名産としてあげるべきものとして印鑑を上げることに異論はないであろう。 

特に狭南と呼ばれる富士川沿いの人口4000人ほどの小さな六郷町は「はんこのふるさと六郷町」を標榜し、山梨県内の印章生産の70%、全国生産の50%を生産するという全国的にも有名なはんこ(印鑑)の町である。 

この町では印章彫刻をはじめ、印材の製造、印材卸売、印章ケース、ケース用金枠、印袋製造、メッキ加工、ゴム印、表札、通信・外交販売など、材料、加工、販売までまるで町全体が一貫生産工場として成立している。

 

山梨が昇仙峡の水晶研磨加工技術を背景にして印章産業が発展したのは想像に難くない。しかし、この六郷町が水晶から直接印鑑産業に結びついたのではない。この六郷町は江戸時代には旧岩間村を中心に、農家が足袋(たび)の製造を副業とし「足袋の岩間」といわれる程の盛業を示し、行商の手によって市場をのばしていた。しかし明治に入ってから機械化による大量生産の製品が多く、また安く出回るようになると、地方の小規模企業は圧迫され、同時に足袋製造に欠かせないこの地方特産の藍の栽培が減少して、次第に「岩間足袋」は姿を消していった。もともと足袋産業で営業力を付けていた人達は、それを生かし、印鑑の注文を営業先で取るようになり、六郷町の印章業が地場産業として定着する基礎となったのだという。

甲州商人の原点である行商による営業力がこの町の再興のビジネスチャンスを与えたのである。

 モテギ株式会社の創業者は六郷の出身であります。もう一つ靴を履く時代になってきた事もある。

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